鯖街道を宇宙まで!高校生が開発した宇宙食サバ缶

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鯖街道を宇宙まで!高校生が開発した宇宙食サバ缶

福井県小浜市の高校生たちが開発した宇宙サバ缶をご存知ですか?

なんと、ロケットに乗って本当に宇宙に行ったサバ缶なのです!2020年のこと。当時、JAXAの宇宙飛行士であった野口聡一さんが、国際宇宙ステーション(ISS)から食レポされたことで話題になりました。まずはYoutubeをご覧ください。

「おいし〜い!」

この宇宙サバ缶は、福井県小浜市の高校生たちが14年もの長い時間をかけて、代々バトンを受け継ぎながら開発したものです。『宇宙食になったサバ缶』という児童書に詳しい状況がまとまっています。実は、この本に、とば屋酢店の話が少しだけ掲載されています。ぜひ、読んでみてくださいね。

今日は、地元小浜の魅力紹介として、宇宙サバ缶を取り上げたいと思います。

高校生によるサバ缶づくりの始まりは1896年から

小浜市にはかつて、日本最古の水産高校である福井県立小浜水産高校がありました。水産高校では開校時から、高校の実習室でサバ缶をつくるサバ缶実習に取り組んでいました。サバ缶は多い時で、年間4万〜5万個も製造されていたそうです。生徒たちがつくったサバ缶は、学校の文化祭や地域の人たちに販売すると、飛ぶように売れていました。

高校生によるサバ缶づくりは100年以上の歴史があったのです。そんな伝統と技術をもつ水産高校に、著者の小坂先生が着任したところから、この話は始まります。

2006年、「HACCP」認証を取得

はじめは、世界の衛生基準である「HACCP(ハサップ)」認証を取得することを目標に、高校の実習室を変えていきました。ハサップでは、原材料を仕入れするところから完成するまでの各工程ごとに、厳しい衛生基準をクリアしていく必要があります。

微生物で汚染されないように、金属が混入しないように。生徒たちと先生が知恵を出し合って工夫し、実習室の配置を替え、消毒し、2006年、ついにHACCP認証を取得しました。食品衛生の授業のなかで、HACCP認証がもともと、NASAが宇宙食の安全性を確保するために設けた基準であることを知った生徒が一言。

ここでつくったサバ缶を、宇宙に飛ばせるんちゃう?

そのまっすぐな言葉が、小坂先生の頭から離れなくなりました。宇宙食サバ缶づくりが始まった瞬間です。

鯖街道を国際宇宙ステーションまで!

小坂先生はJAXAを訪問し、高校生による宇宙食開発への一歩を踏み出しました。JAXAの方の講演で、宇宙の仕組みや国際宇宙ステーションでの宇宙飛行士の生活の様子を学び、宇宙食づくりへの思いを高めていきます。

福井県小浜市は、京の都に近い港町であり、御食国(みけつくに)として知られています。なかでも、小浜のサバは、一塩して京都に運ばれ、鯖寿司などの都の食文化を創り出し、小浜と京都をつなぐ道は「鯖街道」と呼ばれました。

「鯖街道を国際宇宙ステーションまでつなげよう!」

この講演で高校生に伝えられたメッセージは、宇宙食サバ缶開発のキャッチフレーズとなりました。

宇宙ならではの難しさ

宇宙食づくりには課題がたくさんありました。まず、粘性です。宇宙では液体がこぼれると水球になり、空間に浮かんでしまいます。こぼれたタレがISSの機器にふれると故障の原因になります。また、味付けも異なります。宇宙では、味覚が鈍るため、濃い味付けが好まれるのです。

さらに、2013年に小浜水産高校は、市街地にある若狭高校と統合し、若狭高校海洋科学科としてスタートすることになりました。水産高校時代とは異なり、実習時間を確保するのも難しくなってサバ缶づくりが途絶えそうになりました。

畳みかけるように課題が山積みとなった中、立ち上がったのは生徒たちです。宇宙食サバ缶開発チームを結成し、自分たちの力で研究活動を続けました。

そんな中、2014年、宇宙日本食候補にサバ缶が選ばれ、さまざまな検査についてJAXAが支援してくれるようになりました。何度も試作を重ね、先輩から後輩へとバトンを引き継ぎ、タレや味などの課題をクリアして、2018年、正式に宇宙日本食としてJAXAに認定されました。

極上の宇宙食を目指して。地上化計画とともに研究はつづく

宇宙食開発という大きなミッションを達成した高校生たちですが、また、新しい課題に取り組んでいます。宇宙で食事をするときはスプーンを使うので、スプーンで食べやすい柔らかさにしてほしいという要望があったのです。

また、野口宇宙飛行士の動画やテレビでの紹介もあり、全国から問い合わせが集まっていました。

「みんなに、先輩たちのサバ缶を食べてもらいたい。」その想いから宇宙サバ缶地上化計画が始まります。地元の缶詰製造企業である福井缶詰(株)・福井物産(株)の協力を得て、2022年3月8日「若狭宇宙鯖缶」が全国で発売されました。

宇宙服を着たサバのイラストがユニークな量産型宇宙鯖缶「若狭宇宙鯖缶」。パッケージには「小浜水産高等学校」と「若狭高等学校」の2校の歴史と、開発が2006年から始まったことを示す文字が書かれている

宇宙服を着たサバのイラストがユニークな量産型宇宙鯖缶「若狭宇宙鯖缶」は、とば屋酢店オンラインショップでも購入することができます。小浜水産高校時代からつづく伝統と技術をつないで形となった地域の宝、宇宙サバ缶をぜひお試しください!

中野 貴之

中野 貴之

酢醸造家/(株)とば屋酢店 第13代目

「お酢のことならなんでもご相談ください」がモットー。お客様に「また使いたいと思っていただけるお酢」をお届けできるよう社員と力を合わせて精進中。セミナー講師も時々お引き受けします。

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