若狭小浜の特産品『小鯛ささ漬』の魅力を紹介します

お酢を知ろう

とば屋酢店と深いつながりのある小鯛ささ漬

みなさん、こんにちは。ブログ担当の木林です。若狭・小浜地域には、豊かな海の恵みを使った、さまざまな特産品があります。中でも、レンコダイを使った『小鯛ささ漬』は、冷蔵庫のない時代に、新鮮さと保存性を兼ね備えた貴重な魚介として、京の都で重宝されていました。

塩と酢で〆る小鯛ささ漬と、とば屋のお酢には、深いつながりがあります。今日は、お酢屋の立場から、ささ漬の魅力をご紹介します。

小鯛ささ漬とは?漬け物なの?

小鯛ささ漬は、若狭・小浜を代表する海産加工品です。7〜8センチの小鯛(レンコダイ)を3枚におろし、塩と酢に漬け、ささの葉を添えて、杉の木の香りが漂う小さな樽に詰めて作られます。魚を漬け込んで、風味と保存性を高めた漬け物ですが、ぬか漬けのような乳酸発酵はせず、無発酵の漬け物です。

若狭・小浜地域は古来より、奈良・京都の食文化を支える海の食材を供給する『御食つ国(みけつくに)』でした。冷蔵庫のない時代です。小浜から京都への最短距離をとる鯖街道針畑越えルート)でも、約72kmあります。峠道を人の足で運んでいくのです。大事な魚を腐らせないためには、保存技術を高める必要がありました。

小浜では塩の干物、乾物に始まり、なれずし、塩漬け…といった食材加工技術を高め続け、そして、ついにささ漬という革新的な保存方法に到達しました。ささ漬は、酢と塩で漬けることで、保存食でありながら、鮮度も重視しています。乳酸発酵が特徴のなれずしと、私たちがなじみ深い刺身を使った江戸前寿司の中間、『浅ナレ』の贈答寿司として珍重されました。

このような食文化の歴史的な意義から、農林水産省が認定している地理的表示(GI)保護制度の第45号に登録されています。以下のリンク先からとても詳しい説明をご覧いただけます。
登録の公示(登録番号第45号):農林水産省
登録産品紹介(登録番号第45号):農林水産省

現在、小鯛ささ漬の製造業者は、すべて地元の小浜市内にあります。メーカーによって、使う調味料や樽に違いがあります。大半のささ漬けメーカーさんは、同じ地元のお酢屋であるとば屋のお酢を使ってくださっています。

小鯛ささ漬の魅力

今回ご紹介するささ漬けは、道の駅「若狭おばま」で購入してきました。本当は全部買い占めたかったのですが、食べる人の数の都合で、3社だけピックアップしています。

小鯛ささ漬のパッケージ。三社三様のデザインでどれも可愛い

下の写真左から順に、かぎ孫・㈱津田孫兵衛さんの大樽、若狭小浜丸海本店さんの大樽、㈲上杉商店さんの半樽です。三社三様のパッケージがめちゃくちゃ可愛いですね。では、開封!

中身もどれも可愛いです…..! 大樽はちょうど大人の両手で包めるくらいのサイズ感。半樽は、高さが大樽の半分くらいで平べったいです。

ささ漬けのパッケージと杉の木樽
木林

うわ~~~!樽が可愛い~!!!!

語彙力なさ過ぎですが、こういうの大好きなんです。木樽は杉の木でできています。匂いを嗅いでみると、杉のほのかな香りと魚の香りが一緒に感じられました。

さて、ぱかっと開けてみましょう。開け口のようなものがあるわけではないので、樽を横にして、上からトントンとすると蓋が外れます。

メーカー別にみた樽入りの小鯛ささ漬。笹の葉の置き方、樽の形、詰め方も違う

じゃーん!全然違いますね!笹の葉の置き方や切り方、レンコダイの色味も違います。

成分を見ると、丸海さんは塩と酢のみでシンプルな調味が特徴です。上杉さんは、昆布、みりん、お砂糖も使っています。何枚か食べた後に、薄い昆布が一緒に漬けこまれているのを発見しました。かぎ孫さんも、昆布・みりん・砂糖を使って調味していて、他の2社とは異なるお酢を使っています。いろんなパターンが楽しめそうです。

それぞれ、一枚ずつ取り出してみます。サイズ感も違います。だいたい市販のお刺身を二回り大きくしたくらいです。

ささ漬をメーカーで比較。身の大きさや色味、柔らかさが違う

おいしい!すごいしっとりしてる!

結構もっちりしてる。一枚でも食べ応えがあるね

三社それぞれ、身の厚みや柔らかさ、酢と塩の塩梅などで、大きく味が違います。漬け物を食べている感覚はなく、食べやすいお刺身のような感じです。酢の酸味はスッキリ感じる程度で、どちらかというと塩やみりん、そして魚そのものが味の主体です。

食べる前の「ささ漬」の印象は、奈良の柿の葉寿司のように笹の葉が全体を覆うイメージをもっていたり、もっと漬物の酸っぱいイメージが強かったりしました。しかし、実際に食べてみると、とにかく食べやすくておいしいです。4歳の子どもも美味しいと言って食べていました。小骨もなく、お刺身感覚で食べられるので、むしろ現代の人に合っているのではないかと思います。

小浜市の文化観光課の方に教えてもらったのですが、京都の料亭などで使われるときは、細く刻んで酢の物にしたり、お吸い物のタネにしたり、小鯛ささ漬を京料理の食材として活用していたそうです。レンコダイは小さいので、三枚おろしにしても、鯛ほどは身が取れないですし、手間がかかります。しかし、小浜から運ばれたささ漬であれば、鮮度を保った魚を、即座に!手軽に!便利に!お料理に使うことができたのです。

ぜひ歴史にならって、ささ漬を今風に美味しく食べる方法を考えていきたいですね。

小鯛ささ漬のおすすめの食べ方

丸海さんのレシピを参考に、手まり寿司を握ってみました。

ついご飯を大きくしてしまいがちなので、できるだけ小さく、一口サイズに握るのがコツです。とても簡単に、おしゃれなお店の手まり寿司が出来上がり。子どものリクエストで空いた樽をお皿にしてみました。大きめのお皿に乗せるときは、濃い色の角皿にすると写真映えが良いですよ。

ささ漬は、翌日、翌々日と時間が経つにつれ、味が馴染んで美味しくなります。刺身のように食べられるのに、数日にわたって食べることができて、とてもお得な感覚を抱きました。

真空パックで中身が見える小鯛ささ漬と樽入り

ちなみに、小鯛ささ漬に馴染みのない方でも安心して購入いただけるように、中身が見える真空パックにしたささ漬も販売されています。本来の木樽の美味しさにはかないませんが、少量で手頃な価格なので、ささ漬デビューにはピッタリの商品です。一度試していただいて、さらに美味しいという木樽のささ漬、できれば大樽のものを食べていただきたいです。

小鯛のサイズによりますが、大樽であれば18枚くらい入っています。大樽の中でも端の方と真ん中の方で味が違うとも言われます。3人家族一人2枚で、3日間。味の変化を楽しみつつ、とても簡単に魚を食べられます。魚料理が苦手だという方にこそ、食べていただきたいですね。

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とば屋のお酢とささ漬の歴史

小鯛ささ漬は、「食文化ストーリー」創出・発信モデル事業に選ばれて、その誕生の経緯や歴史的な意義が調査されています。とば屋酢店も協力して、帳簿などの記録を調べていただきました。そこから見えてきたものは、ちょうどささ漬が誕生した明治時代に、とば屋酢店が通常では考えられないくらいの大量のお酢を販売していたという史実です。

明治時代、ささ漬は京都の料理人たちに受け入れられ、大量に買い求められるようになりました。大量に買えるということは、大量に供給されていなければなりません。安定して大量に小鯛ささ漬を生産するためには、その材料が近くで安定して手に入れられることが必要でした。

今は移転してしまいましたが、かつてとば屋の醸造所があった酒井区と、ささ漬けメーカーが集まる地区は近い場所にありました。お酢屋のすぐ近くに、お酢を使うささ漬け屋さんがあったのです。こうして、ささ漬づくりという食文化を下支えする役割を果たしてきたことが調査で明らかになりました。

とば屋酢店は300年続く伝統を守り続けています。その間には飢饉も戦争もありました。それでも、大事な種酢を守り、お酢を造り続けることができたのは、とば屋のお酢を必要としてくれる地域の会社があったからです。そして、これからも、小浜市の食文化を次世代へつなげるべく、ささ漬けの魅力、小浜の魅力、そこに住む人・自然・文化の魅力をもっと発信していきたいと思います。

小鯛ささ漬協会・製造メーカー紹介

小浜市が発行する、若狭小浜小鯛ささ漬の歴史と魅力をわかりやすく紹介する書籍『さくらいろのごちそう 御食国ストーリ―「都への贈答食文化」』でも詳しく紹介しています。WEB上で見ることができます。写真を多く使っていて、読みやすい書籍となっています。是非、ご覧ください。

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中野 貴之

中野 貴之

酢醸造家/(株)とば屋酢店 第13代目

「お酢のことならなんでもご相談ください」がモットー。お客様に「また使いたいと思っていただけるお酢」をお届けできるよう社員と力を合わせて精進中。セミナー講師も時々お引き受けします。

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