お酢の過剰摂取のデメリットと推奨摂取量について
お酢が体によいと聞いて、とにかく大量に飲みたい・摂取したいと考える方のために、一日の推奨摂取量やお酢の摂り過ぎによるデメリットをまとめました。お酢は、薬ではありません。数千年にわたって人類に使用されてきた実績をもつ食品のお酢は、一般的な使用の範囲においては、副作用を心配する必要はありません。
しかしながら、どんなものにも限界があります。生きるのに必須である水でさえ、飲みすぎれば中毒になります。この記事では、酢の限界量、飲みすぎによる中毒・デメリットについて解説します。
食酢の酢酸は、胃や喉を傷める恐れがある
お酢は酸性の液体です。他の酸性の液体と同じように、腐食性をもっています。とくに、濃度の高い酢酸の大量摂取は、胃や喉、食道などの上部消化管の粘膜に傷害を及ぼす恐れがあります。大量摂取の影響というものは、人命に関わるものですので、倫理的にヒトでの臨床試験はできません。したがって、動物試験をもとに限界量を判断することになります。
食酢の急性毒性のリスク
マウスにおける酢の急性毒性を調べた研究(※1)を紹介します。4%酢酸水溶液を、さまざまな用量で、マウスに1回飲ませたあと、10日間にわたって生死や体重変化、一般病状を観察しました。この試験結果によると、50%致死量は21.5ml/kgでした。死因は酢酸による上部消化管の障害でした。
この4%酢酸水溶液というのは、市販されている米酢とほぼ同じ濃度です。したがって、体重50kgの成人に換算すると、以下の量になります。
21.5ml/kg × 50kg = 1075ml
約1Lの食酢原液を一気飲みすることは現実的に不可能であるため、市販の米酢の急性毒性は心配する必要はないと考えてよいでしょう。
また、米酢を2倍希釈して薄めた溶液の場合、同じ摂取量であっても、死亡率が1/5に低下しました。このことから、酢の急性毒性は、酢酸濃度を下げれば、リスクが低下することが明らかになりました。食酢を飲用として利用するときは必ず、水や炭酸水などで薄めたり、ジュースに混ぜたりしてから飲むようにしてください。
【参考文献】
※1 マウスにおける米酢の急性毒性と脂質代謝に及ぼす作用について
※2 酢の機能と科学-酢酸菌研究会-朝倉書店【ISBN:9784254435436】
酢酸の酸は、歯を少し溶解させる
有機酸を含む食品や飲料は、歯を少し溶解させます。身近な有機酸といえば、酢の主成分である酢酸のほかに、かんきつ果汁に多いクエン酸などがあげられます。
一般的には、酸味のある食品を口に入れると、すぐに唾液が分泌されて中和されるため、神経質になる必要はありません。しかし、有機酸と歯が長く接している状態がつづくと、歯の主成分であるリン酸カルシウムは確実に溶けていきます。飲む酢だろうと、オレンジジュースだろうと、酸を多く含む飲料は、口に入れたらすぐに飲み込むようにしましょう。
酢の過剰摂取・長期摂取の影響
健康食品としてもよく販売されている食酢飲料を長期で大量に摂取した場合についてもご紹介します。人による臨床試験が複数実施されています。
- 1日に食酢15ml分を14週間継続して摂取した場合
- 1日に食酢45ml分を4週間継続して摂取した場合
- 1日に食酢90ml分を4週間継続して摂取した場合
いずれの場合も、血液検査、尿検査、理学的検査、医師による問診で、臨床上の問題が認められませんでした。この結果から、食酢を薄めた飲料の長期摂取は、基本的に安全であるという結論が導かれています。
【参考文献】
※3 食酢飲料の安全性の検討
※4 食酢飲料の過剰摂取における安全性の検討
とば屋酢店では、お酢の1日の摂取量は大さじ1(15ml)を目標にとお伝えしています。毎日継続して摂取するには、飲む習慣をつけるのが簡単です。当店の飲むお酢飲料 お酢蜜は、飲みやすくて続けやすいと評判。毎朝牛乳割りで飲んでいるという声もいただいております。ぜひ、お試しください。
まとめ
お酢は健康に有用な食品として知られていますが、その摂取には適切な量と継続が重要です。医薬品のような副作用を心配する必要がなく、薬よりも簡単に、比較的安く手に入れることができる身近な食酢だからこそ、上手に活用して、健康維持に役立ててください。
中野 貴之
酢醸造家/(株)とば屋酢店 第13代目
「お酢のことならなんでもご相談ください」がモットー。お客様に「また使いたいと思っていただけるお酢」をお届けできるよう社員と力を合わせて精進中。セミナー講師も時々お引き受けします。