発酵食品「へしこ」の魅力~若狭の海と人知の恵

お酢を知ろう

樽から上げたサバのへしこ

みなさん、こんにちは。北陸新幹線金沢~敦賀間が2024年3月16日についに開業します!福井県への旅行を考えている方に、福井の魅力をお届けするブログ最終回!伝統食品『へしこ』についてご紹介します!

福井県沿岸部を中心に伝わる郷土料理『へしこ』は、保存食というだけでなく、さまざまな健康効果が期待される発酵食品としても注目されています。福井自慢の特産品です。

へしことは?語源は方言「へしこむ」から

「へしこ」とは、魚を塩漬けにした後、ぬか漬けにする若狭地方の伝統的な発酵食品です。福井県南部(嶺南地方)では「重石をかけて漬け込む」ことを「圧し込む(へしこむ)」と言うことから、その名が付いたといわれています。

へしこの歴史は古く、江戸時代中頃にはすでに作られ始めていたそうです。もともと京都に近い港町である若狭・小浜は、古くから「御食国(みけつくに)」として、京都の食文化を支えてきました。グジやカレイなどの若狭の海で獲れる魚介は「若狭もの」と呼ばれ、高級魚として京都で珍重されました。また、足がはやく傷みやすい鯖は、塩漬けにして鯖街道で運ばれ、鯖寿司などに使われました。

福井県海浜自然センターの展示より引用
福井県海浜自然センターの展示より引用

江戸時代の頃から、大網漁が普及し、サバの漁獲量が増えました。一網打尽の言葉通り、サバが大量に手に入るようになったものの、人が鯖街道を通って歩いて運べる量は限られています。福井県海浜自然センターの展示によると、18里(72km)の道のりを30kgのサバを背負って京都まで歩いたそうです。

運び出せないサバを腐らせてしまうのはもったいない!長期保存するための加工技術が必要でした。

寒い冬になると雪は降り積もり、日本海は荒れ、漁に出られない日がつづきます。そんな中、夏秋に大量に獲れた鯖を保存しておくことは、動物性タンパク質を確保するためにとても重要なことでした。そして、長期保存食として各家庭で「へしこ」がつくられました

へしこは、鯖だけでなく、イワシやニシン、フグ、イカなどで作るものもあります。福井県北部(嶺北地方)では主にイワシを糠漬けにした「こぬか(こんか)いわし」をよく食べます。へしこの中で最も有名なのが「鯖のへしこ」で、農林水産省が選定した農山漁村の郷土料理百選にも選ばれました。

農山漁村の郷土料理百選「さばのへしこ」

さばのへしこは、2007年12月に農林水産省から発表された農山漁村の郷土料理百選に選ばれています。農山漁村の郷土料理百選とは「農山漁村の生産や暮らしの中で生まれ、農山漁村で育まれ、地域の伝統的な調理法で受け継がれてきた料理で、現在もそれぞれの地域でふるさとの味として認知され食されている料理」を選定したものです。

樽から上げたサバのへしこ

ポイントは、現在もそれぞれの地域でふるさとの味として認知され食されている点にあると思います。各家庭でへしこがつくられることは少なくなりましたが、小浜市では、保存・継承の取り組みに力を入れています。御食国若狭おばま食文化館では、へしこ作りの講習会を開催したり、てまり寿司やオムレツなどの新しいへしこ料理を紹介しています。

【参考文献】
へしこ | にっぽん伝統食図鑑 | 農林水産省
へしこ 福井県 | うちの郷土料理:農林水産省
『福井県史』通史編3 近世一

とば屋の酒井店で販売しているへしこ弁当

とば屋酢店直営店の酒井店では、「若狭特産へしこのせ」町家弁当がとても人気です。旅情緒にあふれる竹かご入りの町家弁当は、弁当コンテストで金賞を受賞した自信作です前日営業時間内にお電話いただくか、酒井店のInstagramのDMでご予約を承っています。

酒井店では、お酢蜜ソフトや各種お漬物などもございます。小浜までお越しの際は、ぜひ、酒井店にもお立ち寄りください!

【おすすめ】へしこの樽上げ体験

へしこ職人の角野さんは、2019年から廃校となった旧田烏小学校でへしこ作りをされています。樽上げ体験では、昔ながらの木樽を使って漬け込んだ国産サバのへしこを取り出させていただくことができます。建物に入った途端に広がる発酵食品の独特の香り。

木樽の重石をとると、たっぷりの漬け汁が目に入ります。さらに、木蓋と稲わらを除くと、へしこらしい芳醇な香りが広がって、ようやく糠床が見えてきます。埋もれているサバを手探りで探し、グッと取り出す。脂ののったとても立派なサバで、ずっしりと重い!

角野さんのへしこは、内外海(うちとみ)本づくりブランド認証マークのついた、国産へしこです。福井県小浜市の海岸周辺にある内外海(うちとみ)地区において、①国産の素材を使用し、②添加物不使用、③一年以上熟成させた「へしこ」および「なれずし」には認証マークがついています。

角野さんは、昔ながらの製法を守り、常温で一年以上じっくり発酵・熟成させています。熟成期間が長くなるほど、まろやかになります。

試食体験では、新鮮なへしこの刺身と、へしこのなれずしをいただきました。

へしこの刺身とへしこのなれずし

小浜の名物「へしこのなれずし」

鯖のへしこをさらに米と米麹に漬け込んでできるのが『鯖のへしこのなれずし』。へしこを漬けるのに1年以上かかるというのに、さらに、なれずしとして漬け込むという、長い時間をかけてつくられる発酵食品です。

これがとても美味しいのです!へしこよりも塩味が控えめで、まろやかで食べやすいのです。角野さんのお話では、外国人の方にも評判がよいとのことでした。ぜひ、多くの方に食べていただきたい小浜の郷土料理です。

へしこのおすすめの食べ方

一本もののへしこは、まず捌きます。周りについている糠を落とし、身を半分にしてから、適当な大きさに切ります。3枚におろして骨を取り除いてもよいですが、難しい場合はぶつ切りでもOKです。へしこは塩辛いので一度にたくさんは食べられません。食べられない分は、できるだけ薄く小さく切り分け、ラップにくるんで冷凍保存します。

オーブンでへしこを炙るとサバの脂がジュワジュワ音を立て、良い匂いでお腹がすく

グリルやオーブントースターで、さっと軽く焼いてから食べるのがおすすめです。糠が気になる場合は、焼く前に水で洗い流してもOK。お茶漬けにしたり、おにぎりの具にしたり、日本酒の肴にしたり。現代風の使い方では、チャーハンやパスタ・ピザにも使われています。うま味と塩味が凝縮していて、アレンジの可能性は無限大です!

炙ったへしこをごはんのお供に

また、周りの糠も食べられます。フライパンで加熱して、ふりかけにしましょう。とても塩辛いので、大根葉やゴマなども合わせると栄養たっぷりで尚良しです。

福井県にお越しの際は、ぜひ、若狭の海と人知の恵の結晶である『へしこ』をご堪能ください!

中野 貴之

中野 貴之

酢醸造家/(株)とば屋酢店 第13代目

「お酢のことならなんでもご相談ください」がモットー。お客様に「また使いたいと思っていただけるお酢」をお届けできるよう社員と力を合わせて精進中。セミナー講師も時々お引き受けします。

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